詐欺だと知らなかった! 荷物の転送を頼まれただけで逮捕される?
- 財産事件
- 詐欺
- 知らなかった
- 広島
近年オレオレ詐欺に代表されるような特殊詐欺が急増しており、広島県警、広島市共に注意を促しています。
広島県警の発表によると平成30年中の特殊詐欺の被害額は3億4885万1000円でした。広島県内の手口別の被害状況は、件数的には架空請求が129件ともっとも多く、被害額は2億4834万8000円と高額です。
特殊詐欺の多くは組織的な犯行です。役割が細分化されており、何も知らない少年が荷物の転送を任されることも少なくありません。詐欺とは知らずに関わってしまった少年はどうなってしまうのでしょうか。そこで本記事では、知らずに詐欺に関わってしまったケースについて、広島オフィスの弁護士が解説します。
1、そもそも詐欺罪とは? 定義と罰則を解説
まずは詐欺罪の定義や罰則を解説します。詐欺罪とは、簡単にいえば、他人を「わざとだまし」、他人が「だまされて」、「財物を処分して損害が発生する」ことで成立する罪です。それぞれ、「欺罔(ぎもう)行為」「相手側の錯誤(さくご)」、「財物の処分」と呼ばれるものです。
たとえば偽物の骨董品を、偽物と知りながら本物だと顧客に告げ、顧客は本物だと信じて本来の価値をはるかに上回る価格で骨董品を購入したとしましょう。このケースでは、上記の3条件をクリアしているため、詐欺罪が成立すると考えられます。
ただし、これらのどれかひとつでも欠けていると詐欺罪は成立しません。たとえば、だまそうと思っていたのではなく、「本物の骨董品だと信じて他人に偽物を売却した場合」は詐欺には該当しないといえるでしょう。
詐欺罪で有罪になったら、どのような処罰を受けるのでしょうか。刑法第246条の詐欺罪の条文では以下のとおり規定されています。
「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」
「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」
詐欺罪の罰則は「10年以下の懲役」のみとなっており、有罪になって執行猶予がつかなければ懲役刑に処されることになります。ただし、こちらは20歳以上の成人に対する処罰です。
未成年は少年法によって処分が決定されるため、殺人などの重大事件ではない限り刑法により処罰を受けることはありません。未成年が逮捕された場合の流れについては、のちほど解説します。
2、詐欺罪に「知らなかった」は通用する?
近年社会問題化している特殊詐欺は、前述のとおり役割が細かく分担化されている傾向があります。場合によっては、本人が詐欺とは知らないまま関わってしまうケースもあるようです。
たとえば未成年の子どもが友達に頼まれてアルバイトだと思い込まされていた場合、どのように処罰を受けるのでしょうか。
まず、先ほど解説したとおり、本来、本人がだます意志を持って他人をだまし、だまされた他人が財物を処分して損失を被らなければ詐欺罪は成立しないと解説しました。
そのため「友達に荷物の転送を頼まれたから中身を知らずに転送した」というケースでは、その報酬の高低や依頼してきた友達との関係性、性格や生活態度などによって詐欺罪に問われるかどうかが判断されます。
たとえば、「自宅に届いた荷物を転送するだけで2万円」などと、常識的に考えて非常に高い報酬を提示された場合は、「怪しい仕事かもしれない」と想定できるでしょう。したがって、知らなかったなどの言い訳が通用せず、詐欺罪が成立する可能性があります。
また、依頼してきた友達が違法な行動を繰り返す人物であった場合は、依頼された時点で「何か違法なことかもしれない」と想定できるといえます。この場合も、詐欺罪に問われる危険性があります。
逆に、品行方正な友達から平均的な報酬で、目的や中身を知らされずに荷物の転送などを依頼されたら、「詐欺に関わることとは知らなかった!」が通用するかもしれません。
しかし、詐欺の末端に関わった人間まで詐欺罪に問われるかどうかは個別の状況に応じて判断されるものです。自己判断はせず、弁護士に相談の上今後の対応の判断を仰ぐ必要があります。「知らなかった」が通用するかどうかは、人それぞれ、事件の状況によって異なります。万が一、事件に巻き込まれている方は、なるべく早く相談することをおすすめします。
3、未成年が詐欺事件で逮捕された後の流れ
14歳以上の未成年の少年が詐欺事件で逮捕された場合の流れを解説します。
日本では、未成年者が犯罪行為をすると、刑法ではなく少年法によって処分されることになります。したがって、処罰を与えることを目的に罪を裁く成人事件とは異なり、更生を目指した手続きが進みます。つまり、原則として、少年はよほどの重罪でなければ、刑事裁判は開かれません。少年審判と呼ばれる手続きによって処分が決まるため、成人事件のような罰金刑や懲役刑に処されることはほとんどないでしょう。
しかし、たとえ未成年者であっても、14歳以上であれば逮捕され、取り調べを受けることになります。警察は、逮捕から48時間以内に少年の身柄を検察に送致します。
送致を受けた検察は、送致から24時間以内に、釈放するか、引き続き身柄の拘束を行ったまま取り調べを行う「勾留(こうりゅう)」を裁判所へ請求するか、家庭裁判所へ送致するかを判断します。
勾留が決定すると、家庭裁判所に送致されるまで最長20日間身柄が拘束されることになります。ただし、未成年者の場合は、「勾留に代わる観護措置」と呼ばれる手続きが取られることもあります。この場合は家庭裁判所に送致されるまで最長10日間身柄が拘束されることになります。
少年は、成人よりも身柄拘束が認められる条件が厳しくなっています。しかし、詐欺事件の多くは組織的な犯行が成されることから、勾留や少年鑑別所での身柄拘束が認められることが少なくありません。身柄が拘束されてしまうと、学校や職場に出向くことができず、退学や退職を余儀なくされてしまう可能性は否定できません。
取り調べが終わった後、罪を犯したことが明らかであればいずれの場合も家庭裁判所へ送致されます。少年が起こした事件は「全件送致主義」といい、すべて家庭裁判所に送致されて今後の処分が判断されます。場合によっては観護措置がとられ、さらに4週間もの間少年鑑別所で検査や調査などが行われることもあります。
家庭裁判所による調査等が終わると、少年審判が開かれます。少年審判では、裁判官が少年本人や調査官や親、付添人等に話を聞き、更生に重きをおいて処分を決定します。罪の重さだけでなく本人の反省や、更生できる環境の有無によって判断されることになります。
少年審判では、「不処分」、「保護観察処分」、「少年院送致」などの処分が下されます。少年審判においては、少年院送致などの身柄拘束を伴う処分を回避することが子どもの将来のために重要です。
4、弁護士に依頼することで子どもの未来が守られる
あなたの子どもが詐欺罪の末端に関わってしまったときは、逮捕前・逮捕後に関わらず弁護士に早急にご相談ください。ここでは、逮捕された子どものために弁護士ができることを解説します。
未成年が起こした事件で重要なのは「身柄の拘束を回避すること」です。逮捕後最大72時間に及ぶ身柄拘束ののち、勾留もしくは勾留に代わる観護措置として、10日もしくは20日も帰宅できない可能性があります。
さらに少年審判で、少年院送致などが決定すると社会的な不在期間が長くなり進学や就職、結婚にも悪影響を与えることとなります。学校生活に戻りづらくなることも考えられるでしょう。
そのような事態を避けるためには、早い段階で弁護士に相談してください。少年審判における「付添人」として、身柄拘束を回避するための弁護活動を行うことができます。勾留や観護措置が必要ないことを客観的に主張します。
・ 環境整備のサポート
弁護士であれば、少年審判開始までに、関係各所と連携を取って更生のための環境を整えるためのサポートが可能です。学校や職場、家庭と連携を取って、少年を受け入れる環境があること、社会の中で更生することが最善であることを主張します。就職先や就学先が決まっていない場合は、見つけてきて、上申書を作成することもできます。
少年審判においては、子どもの反省度合いや生育環境を考慮して、更生できるように処分が下されるため、非常に重要な活動となります。
・ 被害者との示談交渉
弁護士は、被害者との示談も行います。少年審判は、全件家庭裁判所へ送致されるため、成人事件のように「不起訴処分」はありません。示談を成立させても、少年審判は開かれます。しかし被害者と示談を成立させて深く反省していることを主張することで、処分の軽減が望めます。
すでに子どもが逮捕されている場合は一刻も早く弁護士に依頼して、勾留や観護措置を避けるべく弁護活動をスタートしましょう。逮捕後72時間以内の行動が鍵を握ります。
まだ逮捕されていない場合は、逮捕を回避すべく弁護士が逮捕されないための活動を行います。逃亡のおそれや証拠の隠滅のおそれがないことを、客観的資料を元に主張して、身柄拘束の回避を目指します。
5、まとめ
詐欺だったことを知らなかったとしても、詐欺罪に問われるかどうかは状況ごとに判断されます。逮捕されて身柄が拘束されれば、学校や職場への影響は避けられません。しかし、逮捕される前・または逮捕された直後であれば弁護士のサポートにより、逮捕による将来への影響を最小限に抑えることも不可能ではありません。
ベリーベスト法律事務所 広島オフィスでは、ご相談いただいた内容に応じて最適な対処法を、親身になってアドバイスします。まずはご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています