不動産トラブル(売買、賃貸、リフォーム)の法律的な対処方法を解説
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生活をするうえでは、アパートを借りたりマンションを買ったり持ち家をリフォームしたりと、不動産に関わるさまざまな手続きが必要となります。
そして、不動産に関する取引では、トラブルが発生するケースが多々あるのです。広島でも不動産トラブルは多発しており、広島県の公式ホームページでは、敷金返済に関するトラブルの注意喚起がなされています。トラブルの相手には、修繕費用や損害賠償、代金返還などの対応を求めたいところです。
本コラムでは、不動産トラブルの種類や対処方法、相談先について、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。不動産トラブルに巻き込まれてしまった方や不動産に関する取引をする予定のある方は、ぜひ、参考にしてみてください。
1、不動産トラブルの事例(売買)
不動産を買うときに生じるトラブルとしては、以下のようなものがあります。
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(1)マンションを買ったら雨漏りなどの欠陥があった
マンションなどの不動産を購入後、雨漏りや水漏れ、傾きなどの欠陥が見つかることがあります。
不動産に欠陥があると、住みにくくなるだけでなく、資産としての価値も下がってしまいます。そのため、不動産を購入した後に欠陥を発見した場合には、修補請求、代金の減額請求、契約の解除や損害賠償を検討しましょう。また、買った後に時間が経過してしまうと、売主の責任の期間が経過してしまったり、「買った時点から欠陥があった」ことが証明しづらくなったりしまいます。そのため、欠陥を発見してから速やかに対応することが肝心です。 -
(2)ペットを飼えるといわれたのにペット禁止だった
不動産会社の担当者から口頭で受けた説明とマンション管理規約とに相違があることで発生するトラブルも、一般的です。たとえば、担当者からは「ペットが飼える」と説明されていたのに、マンションを購入した後にペット禁止であることが発覚する場合などです。
マンションを購入する前には、不動産担当者の説明を鵜呑みにするのではなく、マンション管理規約の文面をしっかり確認しておく必要があるでしょう。 -
(3)媒介契約を打ち切ったら費用を請求された
物件を購入する際、不動産会社とトラブルが発生するケースも多々あります。
たとえば、媒介契約を打ち切って他の会社に依頼しようと思ったら仲介手数料とは別項目で費用請求を受けるケースがあります。また、媒介手数料の金額でもめてしまうトラブルも頻発しております。不動産会社の費用の基準は曖昧であるために、このようなトラブルが起こってしまうのです。
2、不動産トラブルの事例(賃貸)
不動産を借りるときにおきるトラブルとしては、以下のような事例があります。
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(1)ペット禁止のマンションで熱帯魚を飼っていたら「契約違反」といわれた
物件を借りるときには、物件の利用方法について、大家からさまざまな制限を受けることになります。このとき、利用規約が明文化されていても、細かな解釈の違いのためにトラブルが発生するおそれがあります。
たとえば「ペット禁止」といわれていた場合でも「熱帯魚ならいいだろう」と思って飼っていたら、大家に「熱帯魚もペットだから飼ってはいけない」といわれる、というトラブルが考えられます。借り主は制限を守っているつもりでも大家からはルール違反だと見なされる、という事例はほかの場面でも起こりえるでしょう。 -
(2)過去に空き巣被害の発生した部屋を借りさせられた
賃貸契約では、「過去に事件や事故が起こった物件を借りさせられる」トラブルがあります。
たとえば、過去に自殺者が出た部屋を借りさせられた、殺人事件や死亡事故が起こった部屋を借りさせられたなどです。こうした事件や事故について事前に告げられなかった場合、「告知義務違反」として、不動産会社に契約解除や損害賠償請求をできる可能性があります。 -
(3)内見の際には設置されていたエアコンがなくなっていた
アパートやマンションの部屋を借りるときには、通常の場合、事前に部屋を実際に訪れて様子を確認する「内見」を行います。
しかし、「内見したときと実際に入居したときで、設備が異なる」というトラブルが起こることがあります。たとえば、内見したときには室内にエアコンがあったので設置されているものだと思っていたら、入居したときにはエアコンが取り外されていた場合などです。
設備については、内見したときの印象だけで判断するのではなく、具体的な条件について入居前に大家や不動産会社に問い合わせておきましょう。 -
(4)敷金を返してもらえない
賃貸借契約では、契約終了時に敷金を返してもらえないトラブルが頻発します。法律的には大家には敷金の返金義務があるのですが、あの手この手で返却する敷金を大幅に減額しようとする大家が多いのが実情です。
敷引き特約によって差し引かれる金額が過大な場合、特約が無効となって敷金の返還請求ができる可能性もあります。 -
(5)過大な原状回復費用を請求された
賃貸の期間が終了したとき、部屋の借り主には「原状回復義務」が課せられます。住居人の責任による損傷や汚損などを回復する費用は、原則的に、借り主の負担となります。費用は敷金から差し引かれますが、原状回復にかかる費用が敷金の金額を上回っている場合には、追加で費用を支払う必要があります。
しかし、本来は借り主の責任ではない損傷や汚損の回復にかかる費用まで請求したり、不当に高額な原状回復費用を請求したりする大家もいます。そのため、敷金の減額と合わせて、部屋の賃貸に関しては賃貸期間が終了するときがトラブルの発生する確率がもっとも高くなるといるでしょう。
賃貸借契約を終了する際の原状回復に際してもトラブルが発生するケースが非常によくあります。本来賃借人が負担する必要のない過大な原状回復費用を請求されるケースなどです。
3、不動産トラブルの事例(リフォーム)
持ち家をリフォームするときにも、想定外のトラブルが発生する可能性があります。
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(1)無断で追加工事が行われて当初より費用が高額になった
リフォーム工事を発注したところ、工務店の判断で勝手に追加工事が行われて、当初の見積もりよりも費用が大幅に上がってしまうパターンです。「調査してみたらこのような工事や対応が必要になった」などといわれて追加工事を正当化して、追加費用を請求されるトラブルも多々あります。
リフォームを依頼する場合には、費用が不透明にならないように、見積もりの詳細や工事の途中経過に注意を向ける必要があります。 -
(2)工事が始まらない、工事が失敗した、業者が倒産した
リフォームを依頼して費用も支払ったのに、工事が予定通りに行われない場合があります。
いつまでたっても業者が工事を始めない、工事に失敗した、リフォーム会社が倒産して工事が途中で終了してしまった、などの事例があります。このような場合、代金を支払っているのに注文した通りのリフォームが実現されないことになるので、発注者とリフォーム業者とのあいだでトラブルが起こるのです。 -
(3)リフォーム詐欺
リフォームは、詐欺の対象ともなりやすいものです。
たとえば、業者が突然自宅を訪ねてきて「無料で調査します」といい、調査させてみると「屋根や水道管などに不具合がある」「耐震工事の必要があります」として不要な工事をすすめてくる事例があります。「補助金や保険金が降りるので無料で工事ができます」などと嘘をついて工事を依頼させるパターンや、工事の実行すらせずお金だけ振り込ませさせておいて連絡が取れなくなるパターンもあります。
このようなリフォーム詐欺を回避するために、突然に家を訪ねてきて工事をすすめる業者や「無料点検」を実施しようとする業者への注文は行わないようにするべきでしょう。
4、不動産トラブルにおける主な相談先
不動産の購入や賃貸、リフォームなどでトラブルに巻き込まれてしまった方が活用できる相談先について解説いたします。
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(1)消費生活センター
全国の消費生活センターでは、不動産取引を含む消費者トラブルについての相談が可能です。局番なしの「188」に電話をすれば、お近くの消費生活センターへつないでもらえます。
以下のようなトラブルのいずれでも、消費生活センターに連絡すれば対応してもらえる可能性もあるでしょう。
- 購入した家に欠陥がある
- 不動産仲介業者とのトラブル
- 大家とのトラブル
- リフォームトラブル
- 詐欺被害
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(2)住宅リフォーム・紛争処理支援センター
住宅リフォーム・紛争処理支援センターは、国土交通省の所管する公益法人です。欠陥住宅やリフォームトラブルなどの問題について相談ができます。業者ともめごとが発生している場合には、住宅紛争審査会における調停などの手続きも紹介してもらえます。
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(3)全国宅地建物取引業協会
不動産業の業界団体である全国宅地建物取引業協では、各都道府県に協会が設置されており、宅地建物取引業者(不動産会社)とのトラブルが発生したときの相談に対応しています。たとえば売買や賃貸で仲介会社とトラブルになったときや、不動産会社から物件を購入してトラブルが発生した場合などに、利用することができます。
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(4)法テラス
不動産会社とトラブルになったとき、法テラスに相談すると弁護士による相談を受けられます。収入や資産が一定以下の場合に、無料で利用できます。
相手業者との交渉や法律的な対応が必要なときには、弁護士に依頼することも可能です。
弁護士への依頼は通常は有料ですが、法テラスに費用を立て替え払いしてもらえる場合があるので、手元にお金がない方でも弁護士に依頼しやすくなるのです。 -
(5)弁護士(法律事務所)
法テラスを利用せず、直接に法律事務所に連絡をして、弁護士に相談する方法もあります。
弁護士は法律のエキスパートであり、不動産の売買・賃貸・リフォームなど、不動産に関する法律トラブルにも対応できます。トラブルの状況に応じた適切なアドバイスが期待できるほか、大家や不動産会社との交渉や訴訟が必要になったときには、弁護士が代理人となって対応いたします。
5、不動産トラブルについて弁護士ができること
不動産トラブルに対して弁護士が対応できる内容について、具体的に解説いたします。
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(1)状況に応じたアドバイス
ひと言で「不動産トラブル」といってもさまざまなパターンがあります。
売買なのか賃貸なのかリフォームなのか、トラブル相手が不動産会社なのか大家なのかリフォーム業者なのか、具体的な事情によって必要な対応が変わります。
弁護士に相談すれば、相談者のおかれた状況をふまえた、最善のアドバイスをもらえることが期待できます。売買契約書や賃貸借契約書などの資料集めが必要な場合には、証拠の集め方についての具体的な指示も提供されます。
さらに、トラブルが起こったら早期から弁護士に相談してアドバイスをもらうことで、後の交渉が有利にすすめやすくなります。トラブルの解決や交渉のためには資料集めや証拠の保存などのさまざまな準備が必要となるので、早い段階から対応を行うことが重要になるのです。 -
(2)相手との交渉
不動産トラブルで相手と交渉することは、一般の方にとってはストレスも時間もかかってしまいます。また、相手がリフォーム業者や不動産会社である場合には法務社員など法律の知識が詳しい人が在籍している可能性が高く、交渉が不利になって自分の利益が正当に主張できなくなるおそれもあります。また、こちらの抗議を無視してしまう業者も多いのです。
弁護士に依頼すれば、本人の代理人として、交渉に参加してもらうことができます。弁護士は法律の専門家であり、交渉のプロなので、自分の利益を正当に主張して交渉を有利にすすめられる可能性が高くなるでしょう。また、弁護士に内容証明郵便で通知書を送ってもらえば、大半の業者は無視できずに対応してくれるでしょう。 -
(3)民事調停やADRの手続き
弁護士に依頼すれば、民事調停やADR(裁判外の紛争解決)の手続きをすすめてもらうこともできます。
民事調停は裁判ではありませんが、裁判所を介して行います。本人が手続きをすすめて申請することもできますが、弁護士に依頼したほうが簡便であるでしょう。また、裁判が必要な事例であるか調停で済ませられる事例であるかについても、弁護士に判断してもらうことができるのです。 -
(4)訴訟や強制執行
不動産トラブルで相手方と交渉をしても和解が成立せず、民事調停やADRでもらちが明かない場合には、最終手段として訴訟を検討することになるでしょう。
訴訟の手続きは煩雑なものですが、特に不動産に関する訴訟ではいろいろな資料が必要となるため、一般の方には対応が困難です。弁護士に依頼すれば、訴訟の申し立てから資料集め、裁判の場における本人の利益の主張まで、すべて代行させることができます。
また、訴訟の結果として相手に支払い命令などの判決が出ても、相手が従わない場合には差押えをはじめとする強制執行を申し立てることができます。しかし、強制執行を申し立てるためには相手の資産調査をはじめとしたさまざまな手続きが必要となります。強制執行の申し立ても、専門家である弁護士に依頼することが得策といるでしょう。
6、まとめ
不動産に関するトラブルに巻き込まれないためには、取引をする段階から慎重な対応をこころがけることが一番の対策といえます。取引をする前に、不安な点や疑わしい点があれば、まずは弁護士に相談してみることで、その後の不動産トラブルが回避しやすくなるでしょう。
もしも実際に不動産トラブルに巻き込まれてしまった場合にも、早期の段階から弁護士に相談しましょう。トラブルを解決するまでにはさまざまな準備や手続きが必要となるので、不利益が大きくならないうちから法律の専門家にアドバイスをもらうことが重要となるのです。
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