交際中に貸したお金を返してほしい|男女間の金銭トラブルを解決する方法は?
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広島県の平成29年人口動態統計によると、広島県内の平成29年(2017年)中の婚姻件数は1万3177組、離婚件数は4,603組となっています。婚姻件数に対して3割超の離婚件数が発生しており、広島県の男女の仲は必ずしも順風満帆とはいえないようです。
親密に交際を続けている段階では、お金に困っている交際相手を助けてあげようと、まとまったお金を貸してあげるということもあるでしょう。しかし、関係が悪化して破局に至ってしまうと、貸したお金の回収が難しくなって、金銭トラブルに発生する事例があるのです。恋人にお金を貸した段階では「これからも交際を続けるものだ」と考えているものですから、借用書を取り交わしていないことが多いでしょう。そのような場合に「お金を返してほしい」と思うなら、借用書とは別の証拠によって、お金を貸した事実を証明しなければなりません。
この記事では、交際相手に貸したお金を回収するための方法について、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。
出典:「平成29年人口動態統計年報第46号について」(広島県)
1、男女間の金銭トラブルが解決しにくい理由とは?
交際している男女は、家族のように親密な関係にあります。
そのため、お金を貸し借りするときにも、借金を返済する期日や利子などを厳密に定めないことが一般的です。
しかし、男女の仲はもともと他人同士であるので、交際関係が破局してしまう場合もあります。
お金の貸し借りがある状態で交際関係が破局してしまうと、貸した側も借りた側も自分にとって有利な主張をして、解決が難しい金銭トラブルに発展する可能性があるのです。
交際当時の金銭貸借については、特に以下の点が問題となる可能性が高いといえるでしょう。
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(1)返還義務について当事者双方に認識の相違が生じがち
交際中の金銭貸借においては、いつまでに返還しなければならないかという期日を定めないことの方が多いでしょう。「そのうち返してくれればいいよ」「お金が入ったら返してね」と、曖昧な約束を取り交わすことの方が一般的であると考えられます。
しかし、口頭での曖昧な約束には、お金を借りた側が都合のいいように記憶を書き換え、「返さなくても良いお金である」と思い込んでしまう可能性があるのです。
このように、お金を返す必要があるかどうかや期日について、貸した側と借りた側に認識の相違が存在することは、揉め事へと発展する可能性を高めてしまいます。 -
(2)借用書がないケースが多い
お金の貸し借りをする際に借用書を取り交わしていれば、返還合意があったことを客観的に証明することができます。
しかし、交際中の男女がお金の貸し借りをする際には、相手のことを信頼して借用書を作成しないケースの方が一般的です。
借用書が存在しないということは、金銭の返還合意に関する客観的な有力証拠を欠くということです。
そのために、金銭トラブルが法的な問題に発展した場合に、「金を貸した事実」や「返還について合意したという事実」を客観的に証明することが難しくなってしまうのです。
2、借用書がなくてもお金を返してもらえる?
借用書がない場合であっても、「金銭授受」および「返還合意」が存在するのであれば、相手に対して金銭の返還を請求することは可能です。
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(1)消費貸借は口頭の合意でも成立する
お金の貸し借りは、「消費貸借」という民法上の契約に該当します。
一般的に、契約には、法令上の特別の定めがない限りは契約書などの書面が必須とはされません。そのため、口頭による合意でも契約は成立するのです(民法第522条第2項)。
したがって、借用書がない場合でも、金銭授受および返還について口頭で合意をしたうえで相手に金銭を交付したのであれば、債務者である相手方に対してお金を返すように請求することができるのです。 -
(2)借用書以外の証拠により金銭授受・返還合意の事実を証明できればOK
金銭授受および返還の合意をしたことを示す証拠として最も強力なものは、借用書です。
もし借用書がない場合には、他の証拠を用いて、金銭授受および返還の合意を立証しなければなりません。
以下では、どのようなものが証拠となり得るのかについて解説します。
3、借用書以外に返還合意の証拠になり得るものは?
借用書がない場合には、金銭の授受があった当時における当事者間のやり取りを別の証拠によって証明することにより、返還合意の存在を間接的に立証できる場合があります。
具体的には、以下のようなものが返還合意の証拠となる可能性があるのです。
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(1)メールやLINEのやり取り
交際相手とのメールやLINEのやり取りにおいて、借りたお金を返さなければならないことを示唆するやり取りが行われていれば、返還合意が推認される可能性があります。
たとえば、
「お金貸してくれない?」
「良いよ、その代わり来月か再来月には返してね」
「わかった、ありがとう」
というようなやり取りの記録が残っていれば、お金を借りた側も「返さなければならない」ということに合意していたという事実が推測できて、認められることもあります。
しかし、このような直接的なやり取りが残っていない場合には、すこしでも返還合意に関係がありそうなやり取りをかき集めて、立証を試みるしかありません。 -
(2)会話の録音
一般的には、男女間の電話のやり取りを録音することはないでしょう。
しかし、もしお金の貸し借りについての会話を録音したデータが残っていれば、メールやLINEのやり取りと同様に、返還合意が推認される可能性があります。
4、貸したお金を返してもらうまでの流れは?
手持ちの証拠から返還合意の事実を立証できる目処が立った場合には、相手方に対する貸金の返還請求を開始しましょう。
以下では、相手方に金銭を返還させるための手順について解説します。
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(1)相手方に内容証明郵便を送付して返済を督促する
貸金返還請求の第一歩は、相手方に対して内容証明郵便を送付して支払の督促を行うことです。
内容証明郵便を送付することによって、こちらの姿勢をアピールして、相手に対して「本気で、借金を回収しようとしているな」と思わせることが可能になります。
それによって、相手が任意の支払いに応じる可能性も高くなるのです。
また、内容証明郵便を送付することで、貸金債権の消滅時効の完成が猶予されることも重要な点です(民法第150条第1項)。
特に、お金を貸してからある程度時間が経っている場合には、消滅時効が完成してしまうおそれが生じます。そのため、速やかに内容証明郵便を送付することが必要になるのです。 -
(2)訴訟を提起する
もし相手方が任意の支払いに応じない場合には、裁判所に対して貸金返還請求訴訟を提起することになります。
訴訟では、「金銭授受と返還の合意をした事実」と「実際に金銭を相手方に交付した事実」を、証拠によって立証する必要があります。
借用書がない場合などには、お金を貸した当時のメールやLINEのやり取りなどの証拠を充分に集めたうえで、返還合意が存在した事実を裁判所に対して客観的に説明しなければいけないのです。
裁判所による検討の結果、原告の言い分が認められた場合には、相手方(被告)に対して貸金の返還を命ずる内容の判決が言い渡されます。 -
(3)強制執行を行う
原告勝訴の判決が確定した場合、原告は確定判決の正本を債務名義として、強制執行の手続きを取ることができます(民事執行法第22条第1号)。
強制執行は、基本的には被告の所有する財産を差し押さえたうえで、強制的に換価・処分する方法により行われます。
たとえば現金・預金債権・給与債権・不動産・車など、被告が所有する財産であれば、一部の例外を除いてほとんどすべてを差し押さえの対象とすることができるのです。
5、男女間の金銭トラブルを弁護士に相談するメリットは?
男女間の金銭トラブルは、当事者同士ではなかなか解決まで至らないケースが多いといえます。
そのため、相手からお金を取り戻したいと本気で考えられている方には、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)有効な証拠収集についてアドバイスを受けられる
借用書がない場合には、返還合意の事実を立証するための手立てから検討することが必要になります。
メールやLINEのやり取りが残っている場合であっても、その量が膨大であるために調べることが大変であったり、具体的にはどのやり取りが有効な証拠となるかという判断をすることが難しかったりする場合があるのです。
弁護士に依頼をすることで、立証に使えそうな証拠を弁護士に適切に選別させて、交渉や訴訟を有利にすすめることができるようになります。 -
(2)感情的な話し合いを避けられる
もともとは恋人同士であった男女間の金銭トラブルは、お金の貸し借りの問題についての交渉であっても、交際当時の感情のもつれが話し合いに影響を与えてしまう可能性が高いでしょう。そのために、当事者同士で冷静な話し合いを行うことは困難なことも多いです。
できるだけ速やかに金銭トラブルを解決するためには、感情に流されず、法的に意味のある論点に絞って話し合いを行うことが重要になります。
弁護士に依頼をすれば、専門的かつ第三者的な視点から冷静なアドバイスを受けられるため、話し合いが感情論に終始して進まないという事態を避けることができるのです。
6、まとめ
男女間の金銭トラブルが問題となるのは、二人の関係が破局した後であることが一般的です。
男女間の金銭の貸し借りは、交際当時は借用書を作らず、曖昧な約束で済ませてしまうケースが特に多いでしょう。
交際期間中であれば、曖昧な約束であっても問題は生じないかもしれません。
しかし、いざ破局してしまった場合には、深刻なトラブルに発展する可能性があるのです。
借用書がないケースでは、お金を貸した当時におけるメール・LINEや音声などの記録を探して、「返還について合意していた」という事実を裏付ける証拠を見付ける必要が生じます。
ベリーベスト法律事務所では、男女間の金銭トラブルの解決実績を豊富に有しています。
過去の交際相手との金銭トラブルにお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの法律相談にまで、ご相談をお寄せください。
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