脱税で逮捕される可能性はある? 起訴までの流れ・罰則・対策を解説

2024年02月13日
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脱税で逮捕される可能性はある? 起訴までの流れ・罰則・対策を解説

令和5年3月、広島国税局は、相続した遺産を隠し、1億900万余りを脱税した容疑がある女性を検察庁に告発したという報道がありました。

脱税は、所得税法違反や法人税法違反として、刑事罰に問われて逮捕される可能性があります。そのため、国税局や税務署による取り調べが行われた時点から税理士や弁護士に相談して、税金に関する処理と刑事手続きに関する対策の両方をすすめることが、重要となるのです。

本コラムでは、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が、脱税事件で逮捕される場合や有罪判決を受けたときに課される刑罰、脱税事件の実例や逮捕への対策を行う方法について、解説します。

1、脱税事件で逮捕されるおそれがある場合とは?

まず、「脱税」の定義について確認しましょう。
企業や個人店の経営者は、常に「節税」を意識されているでしょう。節税とは、“正当な手段で”税負担を軽減させることをいいます。たとえば、個人の場合は「ふるさと納税」を行うことが、国によって用意された手段を正当に用いているため、“節税”となります。
一方で、脱税とは、“不当な手段で”税負担を軽減させることを指します。具体的には、以下のような行為が、脱税にあたるのです。

  • 本来申告すべき所得を隠した
  • 架空の経費を計上した
  • 二重帳簿を作成して正しい申告を行わなかった
  • 税金を軽減する目的で他人の証券口座を利用していた


上記は、いずれも不当な手段で税金を軽減させようとする「脱税」です。
しかし、脱税は、必ずしも逮捕の対象になるとは限りません。脱税に対しては、国税局または税務署による税務調査が行われる可能性があります。そのうち、逮捕にまで至る可能性があるのは、国税局査察部が“裁判所の令状を取得したうえで”行う税務調査となります。
裁判所の令状を取得して行う調査は強制調査であり、悪質な方法による脱税や多額な脱税が疑われる事案に対して行われます。そのため、調査の際に裁判所の令状が取得されていることが判明した場合には、早急な対処が必要となるのです。
また、裁判所の令状がない任意調査であっても、調査の結果により“悪質性が高い脱税である”と判断された場合には、強制調査に切り替えられる可能性があります。もし脱税額が大きかったり、意図的な所得隠しを行っていたりした場合は、早い段階で弁護士などの専門家に相談をしておきましょう。

2、脱税事件で逮捕される場合とされない場合、逮捕後の流れ

脱税した金額が多額であったとしても、逮捕を免れる場合があります。
脱税で逮捕される場合とされない場合の違いや、逮捕された後の流れについて解説します。

① 脱税事件で逮捕される場合と、逮捕されない場合
そもそも、逮捕とは刑事手続きにおいて必ず行われるというものではなく、被疑者が逃亡をするおそれや証拠隠滅をするおそれがある場合に、それを防ぐために行われるものです。逆にいえば、逃亡や証拠隠滅をするおそれがないことを示すことができれば、逮捕をされないこともあるのです。

以下のような場合には、逃亡や罪証隠滅をするおそれがあるということができます。

  • 逃亡の準備をしていることが発覚した
  • 調査の最中に、脱税の証拠を破棄しようとしたことが発覚した


脱税による逮捕を避けるためには、脱税の事実を認めて、捜査に協力することが重要になります。
ただし、逮捕を避けられたとしても、脱税に対する調査や追及が止められるわけではありません。逮捕されない場合は「在宅事件」として扱われますが、起訴(在宅起訴)がされる可能性はのこります。

② 脱税事件で逮捕された場合の流れ
逮捕をされた場合は、まずは通常最大48時間、検察によって身柄が拘束されます。この間は、接見が許されるのは弁護士のみとなります。家族や従業員であっても、この間に面会することはできません。
逮捕されて48時間が経過する前に、検察官は「勾留」が必要かどうかを判断することになります。
検察官が裁判所に勾留の請求を行い、請求が裁判官によって認められた場合には、最大で20日間、身柄が拘束されることになります。
勾留が終わった後には、事件を起訴するかどうか、検察官による判断が行われます。起訴された場合には、刑事裁判が行われることになるのです。

3、脱税事件で問われるおそれがある罪

脱税事件で有罪となった場合の刑罰は、基本的には「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金」です(所得税法238条、法人税法159条など)。脱税した税金の種類によって「法人税法違反」「所得税法違反」「相続税法違反」などと異なる罪状になりますが、刑罰の規定は基本的にどれも同様です
また、刑事罰による罰金や、本来支払わなければならない税金とは別に、脱税が発覚した場合は加算税や付帯税と呼ばれる税金を追加で支払うことが求められる可能性があります。
加算税には、以下の4種類が存在します。

  • 無申告加算税……5%から20%
  • 過少申告加算税……10%から15%
  • 不納付換算税……5%から10%
  • 重加算税……35%から40%


重加算税は、事実を隠蔽して申告した場合や税金を逃れるために申告しなかった場合などに適用されます。強調調査が行われるような悪質な脱税事件では、重加算税が課される可能性も高くなるのです。脱税の事実が発覚した場合には、本来納付すべき税額と加算税のどちらも納付できるように準備しておいたほうがよいでしょう。

4、脱税事件で逮捕された実例

脱税で逮捕もしくは起訴された事例、または逮捕や起訴を免れた事例としては、以下のようなものがあります。

・架空の広告宣伝費を計上したとして有罪判決
令和元年の9月、約1億8000万円の法人税の脱税による法人税法違反の罪で、会社経営者に懲役2年、執行猶予4年の判決を言い渡されました。また、経営者個人だけでなく法人に対しても罰金4600万円が言い渡されています。

・架空の損失を計上したなどとして有罪判決
令和2年3月、損失を架空計上するなどの手口で所得を隠して約2億5000万円の法人税を脱税した罪で、東京都内の会社社長に懲役2年6か月、執行猶予5年の判決が言い渡されました。

・約4800万円の脱税の疑いで起訴
令和元年7月、新潟県の会社役員が所得税法違反、法人税法違反などの疑いで起訴されました。売り上げの一部を申告しなかった疑いが持たれています。同経営者は、逮捕されずに在宅起訴となっています。


脱税事件で逮捕される事例を確認してみると、脱税額が1億円を超えるような場合には、逮捕される可能性が高くなると考えられます。
ただし、脱税額が1億円未満であり逮捕はされなかったとしても、在宅起訴によって事件化される事例も数多く存在します。そのため、脱税額が低くても、それだけで逮捕を免れるわけではないのです。

5、税理士と弁護士の両方に相談するべき理由

脱税をした場合に求められるのは、税務調査への対策と、逮捕・勾留や起訴などの刑事手続きへの対策です。
税務調査への対策は、基本的には税理士に相談することをおすすめします。税務署や国税局の調査が入る前から対策を相談して、調査にも税理士を立ち会わせるほか、税務署や国税局との折衝についても税理士に相談すべきでしょう。

通常、任意の税務調査の場合は事前に予告がされて、日程を調整したうえで行われます。そのため、調査の予告があった段階で顧問税理士に連絡をして対策を講じることが、一般的な手続きとなります。
また、任意調査が予告なく行われた場合でも、業務に支障が生じるなどの理由でその日の調査は都合が悪いことを伝えれば、日程をずらすことが可能なこともあります。税務調査が突然に行われた場合も、すぐにその場で応じることはせずに、税理士に連絡をしましょう。

脱税が事件化した場合は、税理士だけでなく弁護士に依頼しなければなりません。
任意調査と違い、強制調査は予告なく行われますので、事前の準備は不可能です。日程をずらしたり、調査を拒否したりすることもできません。
しかし、税金の専門家である税理士と、法律の専門家である弁護士とが連携をとって今後の対策を講じることで、逮捕や勾留などの身柄拘束を回避できる可能性は高まります。また、起訴されても、法廷での立証や反論などの準備を事前からしておくことで、有罪判決を免れたり執行猶予が付いたりする可能性を高められます。
そのため、税務署や国税局による調査が行われた段階で、税理士だけでなく弁護士にも相談することが重要になるのです。

6、まとめ

脱税の疑いで税務署や国税局による調査が行われたとき、特に裁判所の令状をとった国税局査察部による強制調査の場合では、税金に関する法律に違反したとして刑事事件化して、逮捕や起訴がされるおそれがあります。
脱税で有罪判決を受けると、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金という刑事罰が言い渡されるおそれがあります。また、逮捕や起訴の事実が報道されてしまい、風評被害にも発展する可能性があります。

ベリーベスト法律事務所 広島オフィスでは、脱税事件についてのご相談や弁護についてアドバイスやサポートが可能です。また、ベリーベストグループであれば、税理士への相談はもちろん、弁護士への相談も当グループで完結するワンストップサービスを提供しております。弁護士と税理士が連携して、調査や裁判への対応をします。脱税による逮捕が不安な方は、ぜひ、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスまでご相談ください。

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