マッチングアプリで出会った男が詐欺師だった! 損害賠償の方法を解説
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近年では、ライフスタイルや価値観の変化に伴い、男女の出会い方も変化しています。その一つが、不特定多数の男女が出会う街コンです。
特に地方の少子化が進む昨今では、各自治体も、男女の出会いを促進するために街コンをはじめとする出会い系イベントに取り組んでいます。たとえば、広島県は県民の男女の出会いを促進する「ひろしま出会いサポートセンター(通称:ひろサポ)」を運営しており、小規模の出会いイベントである「こいのわカフェ」を週に1回ペースで開催しているのです。
そして、街コンと並んで新しい出会い方として定着しているのが、互いを気に入った男女同士を出会わせる「マッチングアプリ」です。
マッチングアプリにはデートやワンナイトの相手を探すための軽いものがある一方で、結婚の相手や人生のパートナーなどの真剣な出会いを探すためのものもあります。
しかし、「はやく結婚をしたい」「生涯の伴侶を見つけたい」という女性の切実な悩みにつけこんだ結婚詐欺をはじめとして、マッチングアプリは様々な詐欺の温床ともなっているのです。
本コラムでは、マッチングアプリに潜む詐欺の種類から、実際に詐欺師にお金を奪われた方が返金や損害賠償を請求するためにとるべき対応について、べリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説いたします。
1、マッチングアプリに潜む業者や詐欺師が行う詐欺とは?
マッチングアプリには、恋愛のパートナーや結婚相手を求めている人だけでなく、詐欺のターゲットを探している悪質な業者や個人も潜んでいます。
マッチングアプリで被害にあうおそれある詐欺について、概要を説明します。
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(1)投資詐欺
株や仮想通貨などの投資に関する詐欺には、以下のような種類があります。
・未公開株に関する詐欺
実際にはほとんど価値がない会社の株式を「革新的な技術を開発した企業の株を紹介する」、「もうすぐ上場する将来有望な会社の株がある、値上がりは確実だ」などといって購入させる詐欺のことを、未公開株詐欺と呼びます。
・投資ファンドに関する詐欺
「僕は、証券会社でのディーラーの経験があり、お金を預けてくれたら毎月10%の配当金を支払う」
「知り合いに凄腕のトレーダーがいるから、お金を預けたら数倍にしてもらえる」
このように、虚偽の投資経験やトレード実績をかたって、お金を奪う詐欺は、投資詐欺のなかでも古典的な手法です。
そもそも、他人からお金を集めて資産を運用するためには、「第二種金融商品取引業」の登録が必要とされます。しかし、詐欺を行う業者や個人の大半は未登録のまま資産運用を行うのです。
・仮想通貨(暗号資産)に関する詐欺
「必ず価格が上昇する暗号資産がある」
「取引所に上場する前のコインを特別に購入させる」
このような誘い文句で、無名の暗号資産を購入させる仮想通貨詐欺も、近年は増えています。このような詐欺で購入させられる仮想通貨は、実際には取引所に上場することのないほぼ無価値の資産であることが多くなっております。そのため、投資したお金を回収することは難しいでしょう。 -
(2)結婚詐欺
婚詐欺とは、結婚することを匂わせて、お金を奪う詐欺です。
「結婚をしたいけれど、実家の事業が破綻しそうだからすぐには結婚できない。400万円あれば、なんとかなるんだけど」
「結婚式場を予約するために200万円が必要だけど、手持ちがないから貸してほしい」
このように、結婚をするためにはお金が必要であると嘘をついてお金を奪うことが、結婚詐欺の典型的な手口です。一度だけでなく、何度もお金を奪われる場合もあります。 -
(3)副業・ビジネス詐欺
副業・ビジネス詐欺とは、「初心者でもすぐに月収100万円を獲得できる方法が記載された商材」、「ブログで儲けるためのノウハウが記載された商材」、「誰でもFXで利益を出せる投資ツール」などを標榜する商品を購入させる詐欺です。
実際には、初心者がすぐに大金を獲得できるようなビジネスは、ほぼ存在しません。そして、詐欺の商品は高額であるため、購入した被害者は実質的に損をすることが大半になります。
2、詐欺の被害に気付いたらすぐに証拠を確保しよう
もしマッチングアプリで詐欺の被害にあった場合、返金や損害賠償を請求するため、詐欺の被害にあった事実を示す「証拠」を確保することが重要になります。
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(1)LINEやメールの履歴を保存
LINEやメールなどで行われたやりとりは、相手が詐欺を行ったことを示す、直接的な証拠になる可能性があります。そのため、メールの保存やLINEのスクリーンショットなどを行って、記録を残しましょう。
ただし、詐欺師によっては証拠が残ることを警戒して、文面を残さず口頭でのみ詐欺を行うことがあります。対面での勧誘や、電話、ビデオ通話などによって詐欺を行ってくることもあります。その場合には、音声データなどの記録が残っていれば、証拠となるでしょう。 -
(2)出金履歴を保存
あなたが相手にお金を支払ったことを示す出金履歴も、詐欺の証拠となる可能性があります。
具体的には、銀行通帳の写しや、ネット銀行の入出金履歴の書類などが証拠となります。
ネット銀行の入出金履歴を保存する場合には、スクリーンショットではなく、ネット銀行の正式な書類をプリントアウトしたほうが確実です。 -
(3)相手の本名や住所、連絡先などを確保
詐欺を行った相手に対して返金を求めたり、刑事告訴を検討したりする場合には、相手の本名や住所、連絡先などの情報が必要となります。
相手の行為が詐欺罪などに該当して警察が捜査をしてくれる場合には、相手の本名や住所などについても警察が調査することになります。しかし、民事訴訟で障害賠償を請求するのであれば、被害者の方でも相手の本名や住所を把握しておく必要があります。
ただし、詐欺師は偽名を名乗っていることもありますので、相手の名前が本名ではない可能性もあります。
3、マッチングアプリで詐欺にあった被害者が犯人に対してできること
マッチングアプリで詐欺師に騙されてお金を奪われた場合に、被害者は「刑事告訴」と「返金や損害賠償金」の請求を求めることができます。
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(1)マッチングアプリでの詐欺は刑事罰の対象になる可能性がある
他人を騙してお金や資産を奪う行為は、「詐欺罪」をはじめとした刑事罰に該当する可能性があります。
詐欺をした相手に罰を与えたいと考えているなら、警察に通報をすることで、相手を罪に問うことができます。ただし、警察が捜査に消極的なこともあります。また、相手の行為が刑法に触れており、警察の捜査対象になったとしても、返金のための交渉を行うのは警察ではありません。損害賠償の請求は、刑事裁判ではなく、被害者自身が原告となる民事裁判などによって行う必要があるためです。 -
(2)購入した商品や商材はクーリングオフができる場合がある
詐欺によって商品や情報商材などを購入させられた場合には、購入してから8日以内であれば、クーリングオフを請求できる可能性があります。ただし、クーリングオフが可能なのは、原則として、訪問販売や電話による通販などで商品を購入させられた場合に限られます。
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(3)返金、損害賠償金の請求
マッチングアプリで出会った詐欺師に奪われたお金は、相手に対して返還を請求できる可能性があります。ただし、「返してほしい」という意思を相手に伝えるだけで返金される可能性は、ほとんどないといってよいでしょう。
返金や損害賠償を請求する場合には、まず、請求する意思を相手に通知します。そのうえで、相手が請求に応じない場合は、支払期限を記載した内容証明郵便を送付しましょう。
送付した内容証明郵便は、のちの手続きでも、「返金や損害賠償を請求した(しかし、相手は支払わなかった)」という事実を示す証拠として活用することができます。
内容証明郵便を送付しても返金がなされない場合には、訴訟などの法的手段を検討することになります。
また、内容証明の送付や訴訟を行うタイミングによっては、すでに相手がお金を使い果たしたり資産を隠したりしてしまい、充分な金額が支払われない可能性も生じます。
そのため、損害賠償請求の経験が豊富な弁護士に相談して、訴訟などの対応を適切にすすめさせることが重要になります。
4、マッチングアプリで詐欺にあった場合の相談先
マッチングアプリで男に騙されたときには、ひとりで悩まずに、しかるべき機関や専門家に相談をしましょう。
代表的な相談先を、紹介いたします。
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(1)消費者ホットライン
消費者ホットラインとは、契約に関するトラブルや悪質商法、情報商材、虚偽の広告などに関する相談を受け付けている機関です。
「188」の番号に電話をすると、居住地を管轄とする相談窓口につないでもらえます。
マッチングアプリ詐欺において、消費者ホットラインで対応可能な詐欺は、ビジネスや副業、投資についての情報商材などに関する詐欺となります。なんらかの商品や商材を購入させられるタイプの詐欺にあった場合は、クーリングオフの方法についての助言を受けることもできるでしょう。
ただし、消費者ホットラインの役割は、あくまでも消費者からの相談を受けることに留まります。相手に対して返金を求めるなどの手段を実施するつもりであれば、弁護士に相談してください。 -
(2)警察の相談窓口
警察には、詐欺被害者向けの相談窓口があります。
緊急な相談の場合には110番に電話をしてもよいですが、急ぎではない案件については、各都道府県警の本部に設置されている総合窓口に、相談することができます。
広島県の場合には「♯9110」、ダイヤル回線やIP電話の場合には082-228-9110に電話をしましょう。
警察の相談窓口では、警察官や元警察官が相談を受けます。また、必要に応じて、法テラスや消費生活センターなどを紹介してもらえる場合があります。
事件性があり、詐欺の可能性が高いと判断された場合には、警察が捜査を開始してくれる可能性もあります。 -
(3)弁護士
刑事告訴したいだけでなく、返金や損害賠償金を請求したい場合には、弁護士に相談することが最適です。
弁護士に相談すれば、相手の行為が違法であるかどうか、また返金や損害賠償が可能かどうか、判断させることができます。また、弁護士は様々な法律や法的手続きの専門家であるため、犯人から奪われたお金を取り戻すための総合的なサポートが可能です。
詐欺師からお金を取り戻したいと考えている方は、まずは、弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
マッチングサイトで出会った男による詐欺の被害にあって、お金や資産を奪われた場合、相手の行為は詐欺罪など刑事罰に該当する可能性があります。
詐欺の被害にあったら、相手を刑事告訴して罰を与えることだけでなく、民事訴訟などの法的手段も視野に入れながら返金や賠償金の請求を行うことを検討しましょう。
詐欺によって奪われたお金を取り戻したい場合は、できるだけ速やかに対応を開始することが重要になります。
ベリーベスト法律事務所 広島オフィスでは、詐欺やそのほかの犯罪によってお金を奪われた被害者の方からの相談を受け付けております。民事訴訟に精通した弁護士が、損害賠償の請求をサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。
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